「チューイング」
私がその意味を知ったのは、自分が過食嘔吐をするようになってからでした。
おそらく一般的には「チューイング」と聞いても、「え?ガム?」とくらいしか思わない人も多いのではないでしょうか。
チューイングは、一度食べ物を口にして噛んだり味わったりするけれど、飲み込まずに口から出す、という一種の摂食障害と言われる行動です。
なぜそういった行動をとるようになるのか?
摂食障害についてあまり詳しくなかったり、普通に食事ができる人には理解しがたいかもしれません。
私自身、過食嘔吐をしていましたが、チューイングはまた別の感覚のような気がしていて、「え!飲み込まずに出すの!?それで満足できるの?」という、変なリスペクト感がありました(笑)
もちろんチューイングも、している人にとったら”やめたいけどやめられない”、つらい行動です。
この記事では、チューイングとはどういうものなのか、身体へもたらす負担や、やめるにはどうすればいいか、そんなことを過食嘔吐経験者が考えてみました。
チューイングがやめられなくて悩んでいる方や、ご家族がチューイングをしていて止めたいと思っている方々に、少しでも参考になればと思います。
Contents
「チューイング」は、葛藤が生み出す異常行動?
”チューイング=噛み吐き行為”と言われ、食べ物を口に入れて噛むけれど、飲み込まずに吐き出すという行動です。
チューイングをしている人の声で多いのが・・・
こういった声をよく聞きます。
過食嘔吐をしていた私と似ていると感じたのは、”太りたくない”という部分。
やはり、太ることへの恐怖感や抵抗感が、チューイングをしてしまう原因としては大きいのではないでしょうか。
「おいしいもの食べたい!」
「でも、食べたら太るから食べたくない!」
この相反する2つの感情が生み出す葛藤が、チューイングという異常行動を引き起こしているように感じます。
本当は食べたくて食べたくて仕方ないけれど、太りたくもないから、口の中に一度入れ、味わうことで食べた気になれる!そして太らない!
チューイングを始めた頃は、おそらくそんなメリットを一瞬感じてしまったのではないかと思います。
私の過食嘔吐も、「食べたくないけれど食べてしまった・・・じゃぁ、吐けばリセットじゃん!吐けば大丈夫!」と、そんなことをメリットだと感じてしまったのを強く覚えています。
実際に私が見てきたチューイングをする人たち
私は以前、スイーツ店に勤めていたことがあって、たまにデパ地下の催事場で試食なども勧めながら販売していました。
その際、チューイングをする人たちを度々見かけました。
試食をし、持っている袋にこっそり出している。
チューイングという行動を知らない人は、「なにあれ。なんであんなことするんだろう?」と、眉をひそめていました。
たしかに、はたから見たらそれは異常とも言われる行動です。
でも、私はそれを見て「本当は、あの人だってやりたくないんだろうな。やめたいんだろうな。でも、やめられない。(私と)一緒だね。」って、心の中でひそかに思っていました。
チューイングをする人たちを見ていて思ったのが、”細くて痩せている人が多い”ということ。
やっぱり、「太りたくない」という意識が強いので、自分の体重や体型にかなりストイックに生きているのかなと・・・。
他人から見たら十分痩せているのに、自分の中での理想の基準があるのでしょうね。
チューイングが引き起こす身体への負担
チューイングは、「口のなかに入れて噛んで出すだけだから、身体への負担もそんなにないのでは?」とも思われがちですが、そんなことはありません。
- 過食嘔吐や拒食症になる危険性がある
- 胃が荒れる
- 自律神経が乱れる
- 会食不能になる恐れがある
①過食嘔吐や拒食症になる危険性がある
チューイングを続けていると、満腹感は得られません。
そうですよね、実際にお腹の中には入っていないので、満腹中枢は刺激されるけど胃の中は空っぽな状態。
例えば、味は感じているのに満腹感がなくて、それでは物足りずに食べてしまうとします。
するとその罪悪感(食べたくないのに食べてしまった)から、吐き出す行為=嘔吐に繋がる可能性だってあります。
「一度お腹に入ってしまっても、吐き出せばなかったことになる」と、そんな誤った認識をしてしまう危険性もあります。
また、ほんの少しでも飲み込んでしまうのが怖くなり、反対にまったくなにも食べられない=拒食症になる可能性も・・・。
②胃が荒れる
食べ物を口の中に入れて噛むことで、胃が「出番だ!」といって働き始めます。
胃の中に入ってきた食べ物を消化させようと、胃酸をせっせと出します。
なのに、待てども食べ物はやってこない。
胃の中は、胃酸だけがたくさん出ている状態になるのがわかりますよね。
本来消化すべきはずのものがないまま胃酸が分泌されているので、その結果、胃酸過多になり、胃痛、胃炎、胃潰瘍を招く原因になってしまいます。
ちなみに私も過食嘔吐をしていたので、胃がずいぶん弱くなりました(笑)
胃カメラも何度も飲みましたし、胃酸過多による慢性胃炎と診断されていました。
今でも、お酒は量は減ったものの晩酌はするし、ちょっと食べすぎた日には消化不良を起こして、すぐにお腹を壊してしまいます。
③自律神経が乱れる
食べ物を口に入れて噛むことで、脳が「あ。食事してるのね」と認識します。
でも、実際は身体の中には入らずに栄養はとれていない状態になります。
そのため、「食べたのに、栄養が入ってこないぞ!?」と、脳が混乱して自律神経が乱れてしまうと言われています。
自律神経が乱れるとどういった問題が起こるかというと・・・
- 頭痛
- めまい
- 肩こり
- 生理痛
- 生理不順
- 肌荒れ
- 太りやすい
- 不眠
このように、いろんな問題が起こりやすくなります。
④会食不能になる恐れがある
チューイングをすることで、太らずにいられる。
そう安心してしまうと、食事の度にチューイングをして、普通の食事ができなくなる可能性もあります。
すると、「人前やどこででもチューイングをしてしまうのではないか・・・」と、そんな不安や恐怖心にかられ、人と食事をする(会食)のができなくなってしまう恐れもあります。
友達とのランチや、家族との外食、恋人とのデート。
そんな時にも頭の中は「チューイングせずにいられるだろうか」と、そればかり考えてしまっては、せっかくの楽しい時間も心から楽しめなくなってしまいますよね。
チューイングをやめるには?
チューイングをやめる方法は、これです!!
・・・と答えを出せたらいいのですが、残念ながらこれといったはっきりした答えは出せません。
そんな答えがあったら、とっくに世の中からチューイングという行為はなくなっていますよね(笑)
チューイングを含め、摂食障害になる原因は人によって様々です。
幼少期の家庭環境や体験、母親からの愛情不足、もともともっているその人の気質、遺伝など、いろんな原因が挙げられていますが、それも人によって違います。
私が過食嘔吐をしている時に感じていたのが、「自分はなぜこんなに吐きたいんだろう?」という虚無感。
吐いても吐いても、一時的にお腹はスッキリするものの、心はスッキリしない。
「違う!これじゃない!」って、泣きながら吐いていました。
たぶん、心の奥底に”なにか”があって、本当はそれを吐き出したかった。
でも、”なにか”がなんなのかがわからず、余計にイライラしてむやみやたらに食べて、代わりに食べたものを吐き出していた、という感覚もありました。
チューイングは一見、”太りたくないから”というのが一番の原因に思えますが、実際どうなのでしょう?
本来なら、太りたくないなら運動をすればいい、食事制限をして調整すればいい、と言われますし、きっと本人も頭ではそうすればいいってわかっているはずです。
それでもあえて、”やってはいけないとわかっていてやってしまう”のです。
それには”太りたくない”という理由のほかに、なにか原因があるように思えて仕方ありません。
なのであなたも一度、「なぜチューイングをするんだろう?」と、もう一度自分自身に問いかけてみるのはいかがでしょうか。
”太りたくないから”
↓ なぜ?
”嫌われたくないから”
↓ だれに?どうして?
こんな風に、もっともっと心の奥にある声に問いかけてあげてみてください。
自分でも気づかなかった”なにか”が、見えてくるかもしれません。
まとめ
チューイングは、口の中に食べ物を入れて噛み、飲み込まずに出すという一種の摂食障害です。
最初は「これなら太らずにすむ!」という軽い気持ちから始まったとしても、癖がついてしまうとなかなか抜け出せません。
ひどくなると過食嘔吐や拒食症に発展するなど、命にかかわることにもなりかねません。
今、チューイングをしてしまい抜け出せずにいる方は、先ほどもお話したように、一度自分自身の心の声に耳を傾けてあげてください。
ダイエット目的や興味本位でチューイングをしてみようかなと思っている方は、絶対にやめることをおすすめします。