食べることは、生きること
過食嘔吐

過食嘔吐の原因は母親との関係性?母親とカウンセリングを受けた私の体験談

「過食嘔吐などの摂食障害の大きな原因は、母親との関係性にある」

大学で心理学を学んでいた頃、そんな話を聞いたことがありました。

「母親との関係ねぇ・・・私は家族みんな仲良しだし、摂食障害になることはないな」

当時はそんな風に思っていました。

 

しかし、社会人になって結婚してから、思いもよらず摂食障害になりました。

そして、母親とカウンセリングに通うことになりました。

病院の先生が、母親とのカウンセリングを勧めてきたからです。

 

正直私は、母親は関係ないと思っていました。

「摂食障害の大きな原因は母親との関係性にある」と言われても、まったくピンと来ていませんでした。

「母とは仲良しなのに、なんで私が摂食障害に・・・」

そんなことばかり思っていた私ですが、過食嘔吐を克服した今だからこそわかったことがあります。

 

この記事では、過食嘔吐などの摂食障害の原因について、自分の経験を通して感じたことを書いてみます。

きっと、自分が今苦しんでいる原因を知りたい、なぜ自分が摂食障害になってしまったのか、そう悩んでいる方は多いでしょう。

この記事が、そんな方への気づきのキッカケになれば幸いです。

 

摂食障害と診断されて母親とカウンセリングに通った話

母親とカウンセリングに通うようになったワケ

元々、心因性の咳や不眠症で悩んでいた私は、大学からお世話になっていた先生にカウンセリングを受けていました。

しかし、26歳の時に過食嘔吐が始まりました。

過食嘔吐をするようになって、みるみる体調が崩れ始め、体重も落ちてフラフラするように。

栄養不足にもなっていたし、ちゃんとした病院に通うことになりました。

 

そこで「神経性大食症」と診断され、薬が処方されることに。

病院の先生に、家族構成や家庭環境などを聞かれました。

「お母さんとはどう?過食嘔吐をしていることは話したの?」

 

私は、絶対に知られたくなかったので隠していました。

過食嘔吐のことを話したのは、もう一人のカウンセリングの先生と、ネットでなんでも話せた一人の友達だけ。

母親や家族には、なにがなんでも知られたくない。

そう思っていたのですが、カウンセリングに通い、毎日薬を飲み続けても私の過食嘔吐が治まることはありませんでした。

 

ある日、病院の先生に提案されたのは、摂食障害の方や克服した方が集う会でした。

そこに、母親と一緒に行きなさい、と。

とても抵抗があって最初は断っていました。

でも、「先生がこれだけ母親母親ってしつこいのは、やっぱり摂食障害の原因は母親にあるからなのかな・・・」と思うようになり、勇気を出して母を誘いました。

 

その集いに行って、摂食障害を克服した人の話や、まだ苦しんでいる人の話などを母と一緒に聞きました。

すごく緊張したし、「母はどんな気持ちでこれを聞いているんだろう」と、すごくソワソワして、早く終わってほしいとすら思っていました。

 

集いの会が終わり、母との帰り道で「私もあれ(摂食障害)なの」と、そこで初めて自分のことについて話しました。

自分の過食嘔吐について、先生が母親と一緒にカウンセリングに通うようにと言っていることなどを簡単に話し、次からのカウンセリングに一緒に来てもらうことになりました。

 

カウンセリングに通って変わったこと

母とは何回カウンセリングに通ったかは覚えていませんが、月に1回、予約しても数時間待たされるカウンセリングに付き合ってもらって申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 

カウンセリングも、大体話すことはいつも同じ。

過食嘔吐の頻度はどうですか?

お酒はどのくらい飲みますか?

眠れますか?

薬はどうですか?

お母さんからみて、○○さん(私)は何か変わりましたか?

 

こんな感じの話を15分ほどして薬をもらって終了。

たったこれだけのことに母の半日も潰してしまっている。

しかもなにも変わらない自分。

一向に治る気配がない焦り。

母と通うことで、そんな葛藤や不安が強くなりました。

 

ただ、ひとつ変わったことは、先生に勧められた「日記」のやりとりです。

私がなんでもいいから日記を書き、それに対して母親が言葉を添える、そんな交換日記風のやりとりをしました。

これが当時の日記です。

※夜に食べた物だけ書いてあります。

 

これになんの意味があるのかは、正直わからずにやっていました。

でも、”自分が思っていることや感じていることを言葉にして出す”、”そしてそれを母親に読んでもらう”ことが、今の自分の状態を理解してもらうには手っ取り早い方法なんだなと感じました。

 

「私は元々、母親に自分のことを話すのが苦手だったし、今でも難しいな」

そう改めて思ったやり取りでした。

母と私の関係性

ここで、私と母の関係性について少しお話させてください。

母が20歳の時に私が生まれました。

3年後には弟、そして同居していた他の家族の子どもたちもどんどん生まれていきました。

(家庭環境が少し一般的ではなかったのですが、話すと長くなりすぎるので省きますね)

「お姉ちゃんなんだから」

長女としての私は、「お姉ちゃんなんだから!」と言われるのが当たり前。

自分でも「お姉ちゃんだから」と自然に思うようになっていました。

お姉ちゃんだから、自分が我慢しなくちゃいけない

わがまま言っちゃいけない

母を怒らせちゃいけない

こんな考えが染みついていました。

 

それでも、複雑な家族構成でどんどん家庭環境が変わっていく中での母との関係は、別に悪くはありませんでした。

思春期の頃はもちろん反抗期はありましたが、普段はわりと仲の良い関係でした。

私が10歳の頃に新たに妹が生まれ、その下にもまた妹が。

母の代わりに赤ちゃんである妹たちの面倒をみたりもしました。

お姉ちゃんだから。当たり前です。

 

父の代わりをする私

いつの間にか父が家に帰ってくる日が少なくなっていきました。

母からは「仕事の接待で忙しいから」と聞いていたので、それをずっと信じていました。

結果的には、愛人と子どもを作って向こうの家族として過ごしていましたが・・・。

 

それがわかったのは大人になってからなので、それまでは父親のことが大好きでした。

でも、家に帰って来ないので、下のまだ小さい妹たちがかわいそうに感じていました。

「私の幼い頃は休みの度に遊びに連れて行ってもらったけど、この子たちはそうしてもらえていない」

と思って、私が妹たちを遊びに連れて行くようになりました。

 

母の誕生日には、ケーキやプレゼントを買ってきて、弟や妹たちとお祝いしました。

ご飯に連れて行ってあげたりもしました。

父が、旦那がいなくても寂しくないように。

誰に頼まれたわけでもなく、自然と”自分がなんとかしきゃ”という考えしかなかったんですね。

 

摂食障害が発症する原因は母親だけじゃない?

母との関係性を簡単にお話しましたが、特に悪い関係ではありませんでした。

酷い反抗などもせず、母も私に干渉し過ぎず、いい距離感でやってきたと思っています。

 

「摂食障害の原因は母親との関係性にある」なんて言われても、なかなかピンと来ていませんでした。

しかし、カウンセリングに通って、少し母との距離が近くなったあたりから、母への見方が変わってきたのを感じました。

 

と同時に、数年カウンセリングに通って自分自身とも改めて向き合うことで、いろんなことを客観的に見ることができるようになりました。

そこで私が感じたのは、「摂食障害の原因は、母親との関係性もあるけれど、それだけじゃない」ということ。

いろんなことが積み重なっていたんだな、と感じました。

 

あくまで私の経験ですが、原因と思われることを書いてみます。

  • 母の顔色を伺いすぎていた
  • 良い子になろうとがんばりすぎていた
  • 自分の本心を隠しすぎていた
  • 他人との距離感を作るのが下手だった
  • 性的に嫌な思いをたくさんしてきた

母の顔色を伺いすぎていた

子どもの頃から、母の機嫌が悪いのがとても嫌でした。

イライラしていたり、怒っている顔を見ると、心の中がざわざわして「自分が悪いのかな?」とか「喜ぶようなことをしないと」とか、勝手に反応してしまう傾向がありました。

 

母だって人間なので、イライラだってするし、怒ったりもするのは当たり前です。

だけど、それを見たくない私がいたんですね。

母のことが大好きだから、いつも笑っていて欲しかったのでしょうか。

でも、顔色を伺うのは母に対してだけではありませんでした。

良い子になろうとがんばりすぎていた

「良い子だね~!」

「さすがお姉ちゃんだね~」

って褒められるのが好きで、他の人から良い子だと思われたい自分がいました。

 

褒められると分かっているから、本当は嫌だけど自分が我慢して弟妹に分け与えたり。

本当は自分も望んでいるものなのに、わりとなんでも「自分はいいから」と引っ込む癖がありました。

それでまわりからは、「あの子は良い子だ」と言われて安心する。

 

そして「私は良い子じゃなきゃダメなんだ」と、勝手に思い込んで、良い子に思われるようにがんばっていました。

良い子でいたいから、ワガママは言えない。

本当は甘えたいのに、甘えられないという時もあったと思います。

 

自分の本心を隠しすぎていた

「良い子でいなきゃ」という考え方があるので、自分の本心を誤魔化す癖がありました。

「本当は自分はこうしたい」「これが欲しい」と思っていても、それはワガママだと思われるのが嫌でした。

だから「自分はなんでもいい」「みんなに合わせるよ」と、自分の本心を隠して人に合わせる傾向がありましたね。

 

そんな癖がついていたので、青年期の頃は「自分ってなんだろう?」「私らしいってなに?」「どれが本当の私?」と、自己に対する疑問や不信感が芽生えたこともあります。

本心を言わないのは楽だけれど、見えなくなるものも多かったかなと。

 

他人との距離感を作るのが下手だった

それなりに友達は多かったです。

ありがたいことに、私のまわりには本当に優しくて温かい人が多かったので、病気の間も見守り続けてくれました。

ただ、友達にも家族にも弱っている自分を見せるのが嫌で、本当に弱っている姿は大事な人(恋人)にしか見せませんでした。

 

恋人となった人には依存しまくるようになっていました。

常に一緒に居ないと不安。

少し喧嘩するだけで「捨てられるかも・・・」と不安。

捨てられたくないから、明らかに向こうが悪くても自分が謝って仲直りする。

裏切られても「自分が至らないからだ」と許してしまう。

 

とにかく、見捨てられ不安が強くて、特に恋人という存在にその不安が全面的に出ていました。

見捨てられ不安は、幼少期に寂しい思いをしたり、自分を認めてもらえなかったり、十分に安心できなかった人が抱えやすい不安です。

 

私にとって、自分が一番気を許せて、一番近い距離になる人は恋人という存在でした。

その人に見捨てられたら人生終わったも同然、常にそう思っていましたね。

それが相手にとって苦痛になっていたり、良くないことだとわかっていても、止められないんです。

うまく距離感を保てない自分がいました。

 

性的に嫌な思いをたくさんしてきた

子どもの頃から、変質者に遭遇する確率がめちゃくちゃ高かったです。

幼稚園の頃に、下半身露出したおじさんに誘拐されそうになった記憶から始まり、小学生の頃は叔父による性的イタズラ、レイプ未遂。

中学校の通学時に毎朝変質者に追いかけられ、初めて痴漢に襲われる、などなど。

それを母や家族にも隠して生きていました。

 

そういうことを思い出すと、自分がとても醜い人間に思えました。

気持ち悪い。

こんな身体、気持ち悪い。

全然きれいじゃないし、汚れてる。

嘘つき。

 

そういう思いが強かったです。

おそらく、その思いから自傷行為に結びついてしまったのも、原因の一つとしてあったのだろうなと、今となって感じています。

 

私が感じた摂食障害の大きな原因は”怒り”の感情

ここまで読んでいただいた方の中には、自分も共感できるという方も多いと思います。

反対に、全然共感できないという方ももちろんいらっしゃるでしょう。

 

例えば、親から虐待をされていたり、母親のことを本当に嫌いで、憎んでいたりする人も多いはずです。

「自分が摂食障害になったのは、母親とか家庭環境のせいだ!」

そう思っている人もたくさんいらっしゃるでしょう。

 

その思いは、間違いではありません。

あなたがそう感じて、そう思ったのなら、それは本当のあなたの気持ちです。

誰だって、母親から酷い仕打ちを受ければショックだし、悲しいし、寂しい。

そして、腹が立つし、悔しいし、怒りがこみ上げてきます。

 

「あんたが勝手に生んだんだろ!?」

そう叫びたくなります。

もしも私がそんな環境にいたら、きっとそんな気持ちでいっぱいだったと思います。

 

そう、”怒り”です。

私は、過食嘔吐をしている時にとても強く感じたのは、自分の中にある”怒り”でした。

誰に対してなのか、何に対してなのかははっきりわからないけれど、とにかく怒っている自分がいる。

本当は喚き散らして、全てのものをぐちゃぐちゃに破壊してしまいたい。

全部、全部リセットできればいいのに・・・。

 

そう思いながら、自分の中の怒りを吐き出すかのように過食嘔吐を繰り返していました。

誰かに怒りをぶつけるのではなく、自分自身を傷めつけて、自分の中で解決しようとする。

だから、ずっとずっと終わらない。

だって、本当の怒りを、本当にぶつけたい人にぶつけていないから。

 

今の私は、昔の自分を思い返してそんな風に感じています。

摂食障害の方は、同じように不安や怒りで満ちているのではないか?

ぶつけられるものがないから、自分にぶつけているように思えてなりません。

 

でもそれは、優しい性格の人だからこそ陥る状態なのだと思います。

本来なら、むかついたり嫌だと思ったら、声を上げていいんです。

「やめてよ!」

「私はこうしてほしくない!」

「私はこうしたい!」

 

でも、優しい人とか、私のように臆病な人はそんな風には言えません。

心の奥に抱えている感情や気持ち。

常日頃から、それを素直に出せていないのではないでしょうか。

 

まとめ

「摂食障害の原因は母親との関係性」と言われていることを改めて考えてみました。

おそらく、母親との良い関係性というのは、子どもが自分のことを素直に話せて、それを母親が受け入れてくれる、そんな関係性だと思います。

本当の自分を認めてくれて、受け入れてくれる人。

それは、子どもを生んだ母親の役割ですよね。

 

でも、家庭に事情があったり、母親自身がまだ未熟で、そんな受け入れ態勢ができていなかったりすると、子どもが子どもらしくいられません。

素直に甘えられませんよね。

 

そんな状態で大人になるので、大人になっても誰かに甘えるのが下手になったり。

本心を言えばいいのに、言えなかったり。

怒っていいのに怒れなかったり。

泣いていいのに泣けなかったり。

 

そういった意味では、たしかに「母親との関係性」は原因にも繋がっているのかなと思います。

ただ、摂食障害になる原因は、環境だけでなくその人の気質も大きく関係しています。

 

それぞれの家庭には、それぞれの問題があって、一見平和そうな家庭の中にも不和が生じていることもありますよね。

私のように、家族の仲はわりといいし、虐待などの荒んだ環境ではない場合でも、子どもによっては感じ方が全然違います。

 

自分で言うのもなんですが、私はとても臆病です。

神経質で、いろんなことに敏感で、感受性が強すぎるところがあります。

だから、同じような環境で育った子でも、図太い神経の子どもだったら、摂食障害になんかならずに生きることができたのかもしれません。

 

同じ状況に陥っても、摂食障害になりやすい人と、そうでない人と分かれます。

しかし、摂食障害になりやすい人は”決して弱いわけではない”ということを、心にとどめておいてほしいです。

 

私が伝えたいことは、「摂食障害になる原因は、人によって異なる」ということ。

母親との関係や家庭環境が全てではなく、その人自身の気質なども関係しているのだということ。

 

でも、摂食障害に陥っている人に共通して言えることは「怒りなどの自分の感情を抑え込みすぎ」なのではないかということ。

優しい人が多いので、自分の感情を人にぶつけられないのではないでしょうか。

もちろん、それは悪いことではないんです。

でも、ちょっとずつでも自分の気持ちや本音を誰かに話していくことは大切だと思います。

 

それこそSNSで呟いたり、文字に起こしてみたり、そんなことでもいいんです。

自分が何をどう感じているのか、それを客観的に知ることで、摂食障害との向き合い方も少しずつ変化してくると思います。

いつか、負のループから抜けられる日が来ると願っています。

 

長々とまとまりの悪い内容になってしまい申し訳ありません。

最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。